Dr. ひゅうご のブログ

アラフォー内科医です。生活習慣病や消化器疾患の診療、内視鏡治療に携わっています。

ドックで毎年CT検査をうけるべき?

こんにちは、ひゅうごです。
先日知人から質問をされました。
彼が毎年人間ドックをうけている病院ではCT検査が標準のコースになっているようです。
そんななか医療被爆のニュースを聞いて怖くなったけど大丈夫なのかということでした。

結論をいいますと過去に病変がみつかり毎年のCT検査でのチェックを指導されているような場合を除き毎年のCT検査は受けないで良いことがほとんどです。
これにはいわゆる”医療被ばく”も関わってきます。
ドックの初めてのCT検査後に、医師から毎年CT検査をうけるよう指示がなければしばらくはうけないでよいでしょう。
詳しく話していきたいと思います。

まずは予備知識としてまずドックと健康診断の概要についてです。
健康診断
法律により会社に義務付けられている従業員の健康を守るためのものです。
ドック
ドックは法律に基づかない自由診療の検査です。
健康診断に比べて検査項目が多く手厚い検査をうけられることが多いです。

毎年のドックや健診は健康寿命を伸ばす可能性があるので、血液検査や心電図検査などの基本的な項目は毎年受けましょうと患者さんにはすすめています。
それではCT検査に関してはどうでしょうか。


大量の放射線に被ばくするとがんのリスクが高くなることは知られていますが被ばく量は胸部X線では0.06mSv、CT検査では5~30mSvです。
※部位や撮影手法によって異なります。
CTではレントゲン検査のおおよそ100倍以上の被爆になるということですね。

ただCT検査で受ける放射線によってがんのリスクが増えるかは実は科学的に明らかにされていません。
リスクが増えたとしても他の要因によるがんリスクよりかなり小さいと考えられています。
CT検査により1万人中の数人ががんで死亡すると見積もられていますが、そもそも日本人の3人に1人はがんで亡くなっているからです。
現状では1度のCT検査より喫煙・不健康な食事・環境汚染物質などのほうががんの発生原因になっていると考えられています。

ですので医師の判断でCT検査を指示されたときは、検査結果を元に手術などの適切な医療行為をすることでがんのリスク増加分より病気が改善されるメリットのほうが大きいので心配せず検査をうけられます。

結論はとしては過去に病変がみつかり毎年のCT検査でのチェックを指導されている場合を除きCT検査を毎年受けるメリットはないでしょう。
参考になれば幸いです。それでは。

血圧が高めといわれたら家で血圧を計ろう

こんにちは、ひゅうごです。
今日は高血圧のお話をしたいと思います。

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高血圧とは

高血圧とはその名の通り血圧が高くなる疾患ですが日本人の約3人に1人は高血圧であると推計されています。日本だけでも約4000万人ということなので本当に身近な疾患ですが患者さんのうち適切に治療されているのはそのうちの半数足らずとも推計されています。
長年にわたり血圧が高いままですと脳卒中や心疾患のリスクを高めてしまうので食事の減塩やお薬の服用でしっかり治療をする必要があります。


高血圧の治療

減塩

高血圧が多いのは日本人がたくさん塩を摂取しているのが関係しています。
高血圧患者さんの場合1日の塩分摂取は6g未満にするよう勧められていますが、即席ラーメンやカップラーメンをスープまで完食するとたった1食で5~6g塩分を摂ってしまいます!
いかに1日6g未満というのが塩分少なめかわかりますね・・・

 

薬物治療

減塩や運動療法で血圧が下がらなければ内服治療の検討が必要です。

持病や年齢などいろんなことを考慮してお薬は選ばれます。

2~3種類を組み合わせて治療することもあるので血圧がちょうどよくなるには数ヶ月かかることもあります。

 

降圧目標

脳卒中心筋梗塞の予防のため130/80mmHg未満を目標とすることが多いです。

ただ75歳以上の人や頸動脈の狭窄を指摘された人は下げすぎの弊害が生じることもあるので少し高めに設定することもあります。

 

家庭血圧の測定の具体的方法

自宅での血圧測定は病院での測定以上に重要視されていますので血圧計を1台もっておくのはおすすめです。

手首で計るタイプもありますが、上腕タイプのほうが数値が正確なのでおすすめです。

 

続いてタイミングについてお話します
基本的には朝・就寝前の1日2回の測定がいいと思います。
・朝は起きてから1時間以内

・排尿後

・朝の薬を飲む前にしましょう
排尿後に計るのは、朝に膀胱が張った状態では血圧が上がりやすくなってしまうからです。

また朝と就寝前に2回ずつ計るのが大切です。
1回だけですと変動が大きくなって正確な血圧を反映しにくいからです。
2回測定して平均値をとったほうがブレが少なくなるんですね。

注意!
患者さんによっては、毎朝3・4回測定して一番よかった(低かった)ものを記録するということがありますが、お気持ちはよくわかるんですが基本的にはNGなんです。
そもそも治療指針がそういった計り方を想定していないですし、手間がかかって結局血圧を計るのが面倒になってしまうからです。

それから可能であれば、朝7日分の平均値、就寝前7日分の平均値を計算してみてください。
日々の体調や気温の変化による血圧のブレをならすことができるので、手間はかかりますがおすすめです。

 

続いて血圧を計るのに欠かせない血圧計についてです。
昔なつかしい水銀血圧計は製造禁止となっています。
最近では医療機関でもほとんど見かけることはなくなりました。
バネ式アネロイド血圧計は場所を取らず便利ですが狂いが生じやすいので現在は推奨されていません。
家電屋さんやホームセンターで変える、承認された上腕式の電子血圧計がいいでしょう。

    
まとめ

血圧計は上腕式・無線接続・アプリ対応のものがおすすめです。
計った血圧を自動でスマホへ飛ばしてくれ自動で平均値計算までやってくれるのでとても時短になります。
それでは。

毎日の運動で ”元気に長生き”しよう

こんにちは、ひゅうごです。

今日は運動の効用などお話していきます。

 

糖尿病の患者さんの運動療法の知見をもとにお話しますが、糖尿病でない方にも参考になることが沢山ありますので読んでもらえたら嬉しいです。

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※糖尿病・その他の基礎疾患のある方は事前に主治医に許可を得てから運動に取り組みましょう

糖尿病とは

そもそも、糖尿病の人は血糖値を下げるインスリンというホルモンの作用が不足して慢性的な高血糖状態にあります。

いきなり難しくなった!と思わないでください(笑)
わかりやすく説明していきますね。

高血糖だけなら無症状のことも多いですが、高血糖状態が長年にわたると様々な問題がおきる可能性があります。
糖尿病から引き起こされる問題を合併症とよびます。


糖尿病の合併症として代表的なのは
・慢性の腎不全→悪化した場合に血液透析が必要になる可能性があります
・網膜症→失明する恐れがあります。

・神経障害→感覚を感じにくくなったり、自律神経の問題が起きたりします。

その他にも心筋梗塞脳卒中などの重大な合併症がひきおこされるリスクがあります。

糖尿病の基本をおさえたところで運動のメリットを見てみましょう。

運動療法

運動の血糖を下げる作用について簡単に説明します。
・すぐの効果    運動開始後数分以内に筋細胞内へ糖が取り込まれ血糖値が下がります
・ゆっくりの効果      運動による筋肉量の増加・内臓脂肪の減少により血糖値が下がります。

運動をすると、直後からしばらくしても血糖値を下げ続ける効果があるので健康法としてはとっても優秀!ということです。

有酸素運動

立って運動ができる人は、ウォーキング・ジョギング・ランニングなどを試してみましょう。
立って運動するのが難しい人は、座ってもも上げ・つま先立ちをしたり・プールでのウォーキングがおすすめです。

運動量はまず1日30分もしくは歩数で8000歩を目標としましょう。

筋トレ(レジスタンス運動ともいいます)

男性であればたくましい二の腕に憧れるものですが(笑)まずは体幹と上下肢の大きな筋肉をターゲットにしましょう。

大きな筋肉を鍛えたほうが効率よくエネルギーを消費してくれるからです。

具体的には
・腕立て伏せ →膝をついても構いません
・仰向けからの腹筋 →おなかを触って腹筋が緊張していることを確認します
・スクワット →きつければ椅子に座った状態からでOKです

などがおすすめです。

1セット10回くらいを目安に少しずつ回数を増やしたり強度を上げたりしましょう。
ジムでのマシーントレーニングも強度を簡単に調整することができるのでおすすめです。

柔軟運動

直接血糖を下げる効果は小さいのですが有酸素運動無酸素運動をする下準備になります。
柔軟運動で関節可動域が小さくなるのを予防しましょう。

高齢の人の歩幅が小さくなる主な原因として筋力の低下と関節可動域の低下があります。
筋トレに加えて柔軟運動をして歳をとってもかっこよく大股で歩きたいですね♪

まとめ

人の身体は”替えのきかない自動車”に例えられることがあります。



一生付き合っていく一つきりの身体ですので、毎日の運動でメンテナンスしてあげましょう!
それでは。

GLP-1注射 で簡単・安全にダイエットできるか

こんにちは、ひゅうごです。

今日は前回に引き続いてGLP-1がテーマです。

 

「ダイエット 注射」でgoogle検索すると上位にくるある美容クリニック(2021年10月27日時点)のホームページを見てみました。

美容クリニックのホームページを見てみた

そこには

・ラインを使ったオンライン診療で来院不要、クリニックから届くメッセージに則りオンライン診療できる。
・自宅に薬剤が届く 毎日10秒注射するだけ 

などとなんとも魅力的な言葉が並んでいます。

通常の病院受診のように医療機関へ出向いたり、受付をしたり、長い待ち時間を待つ必要はないようです。

加えて注射もどうやら簡単そう・・と医療に詳しくない方だったらぐっと惹きつけられるかもしれません。

 

続けてみてみましょう。

・ 初めての方に限り19,800円で提供
・ 再診の方のGLP-1の金額は1本総額54,780円

・ 痩せホルモンとも言われるGLP-1を自宅で注射するだけで、高いダイエット効果が期待できる。

どうやらGLP-1注射は初回は1本約20,000、2本目以降は約55,000円となるようです。

お薬がもつ期間は1回の投与量次第なのでなんとも言えませんが、もし注射が1ヶ月もちかつしっかりと減量できるとすればこの金額を払いたいという人もいるかもしれません。

 

少し長くなりますが続けて、お薬の効果・注意点についての記載を見ていきます。

・つらい食事制限や運動は必要ない
・メリット
   ストレスなく自然と食欲が抑えられる
   体脂肪がつきにくくなる
      太りにくい体質づくりをサポート
      内臓脂肪に燃焼を促し、太りにくいカラダに改造
・デメリット
      多少の胃の不快感や便秘や下痢になる可能性がある

上記のように記してありました。

実際に糖尿病治療の現場でもGLP-1製剤で体重が落ちることは報告がされていますが、ほんとうに「つらい食事制限や運動が必要ない」のでしょうか。

 

私の考えを書いていきます

”楽してダイエット” は魅力的だけどやっぱりダイエットの基本は食事と運動

厚生労働省では生活習慣病対策として ”1に運動2に食事 しっかり禁煙 最後にクスリ” というスローガンを掲げています。

私の考えも基本的には同じです。

運動

 1日8000~10000歩 くらいの運動を患者さんにはおすすめしています。仕事中も含めてこの歩数です。

運動には減量以外にも様々なプラスの効果が知られています。
・勉強や仕事の集中力の向上
・精神状態の安定
・便通の改善

などどれもすばらしい副産物です。

食事

野菜・豆・魚・全粒穀物(玄米や全粒粉)を中心にした食事を患者さんにはおすすめしています。

適切な食事で減量や血圧の低下が期待できますが、他にも上記の食事で食道がん・大腸がんの予防や高脂血症の改善が期待できます。

 

それでもどうしてもGLP-1製剤ダイエットをしてみたいのなら

GLP-1製剤はもともと糖尿病治療の薬で、減量目的での使用実績は少なく安全性についてははっきりしません。

ですので、私としては知人からGLP-1製剤ダイエットについて尋ねられたら「やめときなよ」と言いますが。

それでもどうしても使いたいという場合は、数ヶ月程度の短期間に限定して使ってみるのを提案します。

長期間の使用に比べて短期間の使用のほうが問題の起こる確率がさがるとおもうからです。

 

まとめ

GLP-1製剤ダイエットについて私見を述べてみました。少しでもお役に立てれば嬉しいです。それでは。

2型糖尿病治療薬の ”GLP-1製剤” について

こんにちは、ひゅうごです。

今日は美容の分野でも話題になっている、糖尿病治療薬のGLP-1製剤についてお話したいと思います。

GLP-1製剤とはf:id:rapuchang:20211026193004p:plain

GLP-1製剤というのは総称で現在いくつかの商品が日本で使用できるようになっています。

今日は代表的なものとして2010年頃から使われているビクトーザ®という注射薬を取り上げます。

GLP-1製剤 ビクトーザの効果は


ビクトーザの ”添付文書”というお薬の説明書には、2型糖尿病の治療薬であること、作用機序として”グルコース濃度依存的に膵β細胞からインスリンを分泌させる” とあります。

つまり、血糖値が高いときには血糖降下ホルモンであるインスリン分泌を増やして血糖を下げ、血糖値が低いときにはインスリン分泌を増やさないので血糖に影響を与えない、というとても都合よく働いてくれるホルモンです。

GLP-1製剤 ビクトーザのデメリットは


しかし デメリットとして、可能性が高くはありませんが低血糖・急性膵炎・嘔吐腹痛・甲状腺腫瘍・腸閉塞などの問題を起こしうることも記載されています。また妊婦の方に投与すると胎児の奇形が起きてしまう危険性も報告されていますので、女性の方は特に注意が必要です。

 胃腸障害の発現を軽減するためには、低用量より投与を開始して用量を少しずつ増やすことが有効です。

またインスリンも含めた自己注射薬の一般的な注意事項もあります。

自己注射した針は感染や怪我のの恐れがあるので適切な処分(決められた適切な廃棄用容器にいれて医療機関にもちこむ)をする必要があります。

ですので、ビニール袋にいれて一般のゴミ収集にだしたりするのは非常に危険なので避けなければいけません。

美容クリニックでの GLP-1製剤 ビクトーザ

また、副次的な減量の効果も報告されていて最近はこちらを目的に自由診療でGLP-1製剤を処方する美容クリニックも増えてきています。

また改めて美容領域でのGLP-1製剤の使用についてはお話していきたいと思います。

まとめ

今日はGLP-1製剤 ビクトーザに関して簡単にお話しました。


それでは。

コロナの後遺症は怖いもの?

こんにちは、ひゅうごです。

今日は新型コロナウイルス感染の後遺症について考えてみたいと思います。

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下記のような記事がありました。

コロナ後遺症 長期化
新型コロナウイルス感染後、長期間続く「後遺症」に悩む患者が増えている。倦怠感や認知障害など症状が多岐にわたるうえ、1年以上も続くケースがあるなど、実態が徐々に見えてきた。さらなる実態解明とともに、長引く症状に苦しむ人への支援の拡充が急務だ。    読売新聞 2021年10月25日

コロナウイルス後遺症とは

新型コロナウイルス感染者は世界累計で2億人を超えて、高齢者や糖尿病・免疫不全などの基礎疾患のある人を中心に重症化しやすいことがわかっています。
一方、後遺症に関してははっきりわかっていませんでしたが、少しずつ調査が進められているようです。

コロナで入院した患者さんの後遺症では、20~50歳代の患者さんが増えてきているようです。
また、症状として疲労感・倦怠感・息苦しさ・睡眠障害・思考力の低下・脱毛などがあることが調査でわかっています。

なかには症状が半年以上続き休職を余儀なくされる患者さんもいるとのことで後遺症の深刻さがわかりますが、個人的には後遺症に関しても ”正しく恐れる” ことが大切だと考えます。

コロナ後遺症を”正しく恐れ正しく備える”

その理由として、コロナ後遺症のメカニズムがまだ解明されていないことを挙げたいと思います。
後遺症として報告されている、疲労感・倦怠感・息苦しさ・睡眠障害・思考力の低下などのいずれも入院治療を経験した人であればコロナ感染症に限らず起こりうるものです。
肺炎であれ骨折であれ検査入院であれ、入院中には環境の変化や行動の制限がかかり、大きな身体的・精神的ストレスがかかる可能性があります。
その結果 上記のような ”後遺症” が生じることは十分にありえます。
コロナ後遺症として報告されているものが、新型コロナウイルス感染症に特有のものなのか入院全般に共通のものなのかはまだはっきりしていないというのが現状だと思います。

誤解がないようにお話しますが、コロナ後遺症が軽いものだと言っているのではなく、”正しく恐れること” と ”正しく備えること” が肝心だということです。

”正しく恐れ正しく備える” とは繰り返し強調されているように、外出時ははマスクをする・手洗い・アルコール消毒をする といったことです。

また、生活習慣病治療に従事するものとしては運動と睡眠の重要性もここで強調しておきたいと思います。

上記のように20~50歳代の働き盛り世代の後遺症が増えているのは、働き盛りの人たちが多忙のため十分な運動や睡眠の時間がとれていないことも一因と考えます。

こんなときだからこそ、以前より1000歩/日多く歩くようにする・以前より30分長く眠るようにすることで免疫力を高め、重症化や後遺症を防げることが期待できます。

”正しく恐れ 正しく備える” ことを続けて、後遺症の解明が進むことを切望しています。それでは。